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企業は労働者に笑顔の強制はできるのか

先日、顔認証技術を使って、一定以上の笑顔であれば出勤とみなす出退勤システムを札幌市の会社が開発したというニュースがありました。すでに札幌市の担々麺専門店が導入を決定したとのことでした。

 

サービス業で働く方々が笑顔で接客してくれるのは、客にとっては気持ちがいいものです。ただし、私はこの記事を読んで、「これはちょっとまずいんじゃないかな」と感じていました。果たして笑顔でない人を出勤扱いにしない、つまり給与を支払わないという企業側の決定権が果たしてあるのだろうか、ということです。

 

案の定、続報が出ていました。このシステムは「労基法違反になるのではないか」との声が上がったとのことで、この疑問をもってあるメディアが開発元に取材したところ、「笑顔でないからといって出勤扱いにしないシステムはまずい」ということは分かっているというのです。おそらくは、公表、記事化で多くの人の知るところとなり、「これはまずいんじゃないか」との声が入ったことから、最初のスタンスから少し軌道修正したのでしょう。

「労働者への人権侵害だ」との声が増えている米国

それでは、私がなぜ「まずいんじゃないか」と思ったかといえば、数年前、アメリカ在住時にこんなことを聞いたことがあったためです。それは、同国では、フライトアテンダントやハンバーガーショップの店員が笑顔で働くことや、女性らしく振る舞うことを企業側から事実上強要されているのは、「労働者の人権に対する侵害だ」「労働者も落ち込んだときに悲しい顔をする権利はある」などといった批判が少なくない知識人(リベラル系知識人)の間から上がっているのを見聞きし、「なるほどなあ」と思ったことがあったのです。

 

そして、この「笑顔を強制できない」という考え方の潮流は、米国では徐々に主流派を占めつつあるのです。また実際に、(いや、それとは関係なく、もともとなのかもしれませんが)アメリカのサービス業に、いかに不満げな表情や仏頂面の店員が多く働いていることか(笑)。

 

この話と今回の新システム開発の話とは、基本的には同根です。企業側や消費者はたしかに従業員には笑顔で働いてほしい。しかし、笑顔で働かせることを強制できる権利があるのかどうか、ということがポイントなのです。まあ、法律論で行けば、きっとそんな権利はないのでしょう。

日本のサービスのレベルの高さは笑顔とホスピタリティだが

けれども、日本のサービス業のサービス、ホスピタリティのレベルの高さというのは、世界を見渡してもずば抜けています。そしてそのずば抜けたサービスの一つは、従業員の「笑顔」であったりするのです。いまでも多くのサービス業企業が、従業員に対して「笑顔」教育を施しています。そして、やはり消費者は、従業員が自然な笑顔で接してくれるお店に安心感、親近感を抱くことでしょう。

では、そこからちょっと視点を変えて、企業として「うちの社員は全員、文句なしに笑顔です」とアピールするのと、「笑顔をするかどうかは本人の自主性に基づいている」と強調するのと、いったいどちらが消費者からの好感を得られやすいのでしょうか?

皆さんはこの問題、どうお考えになりますか?(高橋眞人)

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