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謝るのが美徳の日本人、謝らないのが美徳のアメリカ人(6)

日本マクドナルド失敗の教訓とは

日本国内でも、欧米企業の幹部が危機対応で失敗し、日本のメディアから批判を浴びる事件が時々起きている。

2014年7月、日本マクドナルドのチキンナゲットに期限切れの鶏肉が使用されていたとの指摘が出てきたが、10日も経って、同社のサラ・カサノバ社長(カナダ出身)がやっと会見に臨んだ。しかし、おじぎはしたものの、あごをあげたまま、自社の素晴らしさをアピールするとともに、「マクドナルドはだまされた。私たちこそ被害者だ。一部中国の工場で起きた彼らの仕業だ。日本向けに出荷されていたという証拠はない」などと自己弁護を繰り返し、「開き直り会見だ」「高飛車だ」などと批判を浴びた。

スーツ、ヘアスタイル、眼鏡、表情のいずれも日本の謝罪に合わない

気の強そうな黒縁フレームの眼鏡、無造作なロングヘア、きびきびとした印象の黒いビジネススーツ。顔つきは厳しく、鬼軍曹のように記者団を睨みつけているよう。これは謝罪ではなく、「わが社は正しい」と主張したいのだと、日本人の多くが感じたはずである。

不幸にも不祥事が続発

運が悪いことに、同じ年の夏、マクドナルドの店舗で提供されたポテトフライの中に人の歯が入っていたという事件が起き、さらに、2店舗で提供されたチキンナゲットの中にビニール片が入っていたというクレームも発覚した。

ビニール片の事件が起きてから3日後、日本マクドナルド青木岳彦・上席執行役員が記者会見を開き、顧客に対して謝罪を行い、今後提供する食品の安全性を守ることを約束した。

ところが、メディアは同社の謝罪のタイミングが迅速でなかったこと、カサノバ社長が記者会見に現れなかったことについて批判を加えた。不幸にも、カサノバ氏はこの時、海外出張中だったが、鶏肉事件で日本国民を大いに落胆させていたカサノバ社長は、もうこのときすでに、メディアにとっては批判を集中させるべきターゲット、いいカモとなっていた。

日本中が一気にマクドナルド離れ

当時、カサノバ氏は日本人の視聴者(消費者)に嫌われたと言っても過言ではない。異物の混入、ナゲットに期限切れの鶏肉を使っていたなど、次々と問題が発覚し、これでもかこれでもかと表れる欠陥商品について、日本中が一気にマクドナルド離れを起こした。

業績は史上最悪の赤字に

日本マクドナルドは、カサノバ氏の最初の会見の「わが社は被害者だ」と言わんばかりの良くないイメージが響き、謝罪を行っても、同社への信頼を回復することも、落ち込んだ売上を取り戻すこともできなかった。 その結果として、同社の2014年の業績は6年連続の売上ダウンとなり、2015年の上半期は同社史上最悪の2億4千2百万円の赤字を計上することになった。

がらりとイメ―ジを変え、謝罪の気持ちを伝えたカサノバ氏

2015年2月5日、カサノバ氏は自ら東京証券取引所での決算発表記者会見に出席し、深々と頭を下げて一連の混入事件について英語で謝罪した。カサノバ氏は「食品中の異物混入の件でご不安、ご心配をおかけした皆様に対し、改めて心からお詫びを申し上げたいと思います」と述べた後、深々と5秒間のお詫びのお辞儀を行った。カサノバ氏は謝罪の言葉に5分間以上もの時間を費やした。

東京証券取引所で謝罪したカサノバ社長

黒のスーツはライトグレーになり、ロングヘアは後ろに束ねて、黒縁眼鏡も変えてよりソフトなイメージになった。口調はより柔らかく丁寧に、そして表情の厳しさはなくなっていた。両手を前で重ね、日本流の礼儀作法にのっとったお辞儀を行い、記者団に静かに「グッドアフタヌーン」と呼びかけ、「お忙しいスケジュールの中、来てくださってありがとうございます」とお礼を言った。前回はより気軽い調子の「ハロー、エブリワン」であった。印象はそれまでとはまるで違っていた。

メディアトレーニングなしではこれほどイメージはかわらない

欧米のビジネスマンに対して多くのメディアトレーニングを提供してきた私には分かるが、彼女はこの間、日本でメディアトレーニングを受け、謝罪の仕方についてみっちり特訓を受けていたに違いない。それでなくては、北米出身のエリートビジネスウーマンが、これほどの違いを出すことはできなかったろう。

日本人の感情にフィットする謝罪スタイル

それまでの会見は自己主張満載であったものが、今回は謝罪を前面に押し出していた。そして、この謝罪の仕方が、我々日本人の感情にはフィットした。カサノバ氏は「もう一度、企業努力を徹底的にする」という約束をおこない、多くの日本人は「それでは、また食べにいってみるか」と思ったのではないか。(高橋眞人)

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