謝るのが美徳の日本人、謝らないのが美徳のアメリカ人(12)

不祥事ではないのに謝罪したSMAP

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自分に責任がなくても謝る日本人、責任の一部があっても他者を責めるアメリカ人

 日本人は、たとえば自分に責任がなくだれかほかの人に責任がある場合であっても謝ることがある。こうした日本人の振る舞いはアメリカ人などにはまったく信じられないようなことだ。先述の我妻洋ら は以下のように書いている。

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 アメリカ人は少なくとも責任の一部が自分にあると分かっているときでも他者を責めるが、日本人の多くはほかのだれかが悪いときでも自分が謝ったほうが良いと考えているようだ。日本人特有の文化における謝罪は、個人が損害を与えてしまった他者との関係をスムーズに運んだり回復したりしようとする表れなのである。


(我妻洋ほか「The Implications of Apology: Law and Culture in Japan and the United States」)

「ファンに不安を抱かせた」と謝罪したSMAP

 我妻らが述べるように、日本人は謝罪と自己卑下を通じて他者との調和を図ろうとする。

 2016年1月18日、人気男性アイドルグループSMAPの5人のメンバーがテレビ番組で頭を下げて視者に謝罪した。報道にしたがってことの顛末をごく簡単に説明すると、こうなる。SMAPの育ての親と言われ、5人のメンバーに母親のような絶大な影響力を持っていると言われる女性マネージャーが、所属する「ジャニーズ事務所」の幹部から退職するようにプレッシャーをかけられたため、メンバー4人とともに事務所を辞めようと図った。もう一人のメンバーである木村拓哉だけは事務所に残留することを決めた。長年、国民的アイドルグループだったSMAPが解散するかもしれないということで、熱烈なファンだけでなく、日本じゅうが騒然となった。 SMAPのメンバー5人は、テレビ番組の中で頭を下げて謝罪した。解散するから謝罪したのではない。この時点ではグループを維持していく予定だった。ファンに不安を抱かせたことに対して謝罪したのである。何か不祥事を起こしたとか、ファンに対する約束を破ったということではない。

米国に事務所の移籍で謝るタレントはいない

 このようなタレントによる謝罪はアメリカでは決して起こらない。なぜなら、グループを続けるか解散するかは、純粋にタレントたち本人とタレント事務所のビジネス判断によるものと考えられているからである。であるから、米国では人気バンドが解散したり人気歌手が一つの事務所から別の事務所に移籍することは、ごく普通に起こるし、そんなことでいちいちテレビで謝ったりはしない。

個人より組織の責任を重く見る日本

 もう一点、アメリカ人が個人の責任を責める状況において、日本人は組織を責める傾向にあることが研究で明らかにされている。この現象については、日本人がアメリカ人と比べてより集団としての行動を重んじるという伝統的考え方によって説明できる。(高橋眞人)

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