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謝るのが美徳の日本人、謝らないのが美徳のアメリカ人(14)

謝罪行動に対する裁判制度の影響

 これまでは日米の謝罪文化の違いをめぐる文化的・伝統的原因を述べてきた。日本では、謝罪は毎日の人間関係の中で使われる社会的な潤滑油である。しかし、日本の謝罪の文化がアメリカとそれと異なっている原因の一部は、両国の法と裁判のシステムが異なることにもありそうだ。

自動車事故で決して謝らないアメリカ人

 自動車事故の当事者になったとき、日本人がすぐに相手に謝りがちなのに対して、アメリカ人が決して謝らないという対応の違いはよく知られている。文化人類学の我妻洋氏らは次のように言う。

  アメリカ人は警察官から何かをとがめられると、よく「なぜ私なのですか?」と聞き返す人が多いが、日本人の場合は「すみません」と謝る人が多い。アメリカ人は怒りを示し、日本人は恥じ入る。アメリカ人は警察官に抗弁し、やり込めようとするが、日本人はとがめを受け入れ、善意で応えようとする。


(我妻洋ほか「The Implications of Apology: Law and Culture in Japan and the United States」)

 アメリカ人が「謝罪」をどう考えているかについて、我妻氏らは「アメリカ人は個人の独立と内面的整合性に大きな価値を置くため、謝罪することは自己の表現としての重要性を持つ」と洞察している。

謝罪により相手の気持ちを鎮めることを期待する日本の裁判官

 一方、日本の法律に詳しいミシガン大学のマーク・D・ウェスト教授は、日本人とアメリカ人の対応の違いを以下のように説明している。

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 日本の法制度は当事者間の謝罪を奨励している。両者の市民生活における謝罪行動が対照的であるとして広く使われる例が自動車事故である。自動車事故に際して、日本人は謝るが、アメリカ人は謝らない。それには理由がある。アメリカでは、謝罪すれば裁判所から罪を認めたと取られてしまう。しかし、日本では相手に謝り、相手の気持ちを鎮めることによって、事態の解決につなげられる可能性がある。



(マーク・D・ウェスト 『Secrets, Sex, and Spectacle』)

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 日本では、裁判の場においてさえも、相手に謝り、相手の気持ちを鎮めることを、裁判官から期待されることがある。調停の場では、なおさらそのような傾向となる。ところが米国では、一度謝ってしまえば、裁判所から「罪を認めた」と受け止められてしまうため、絶対にこれをしてはならない。非常に大きな違いである。さらにウェスト氏は、日本の裁判制度が果たしている役割について、以下のように解説する。

勝ち負けではなく「矯正」を目標とする日本の裁判

 日本の裁判官は判決を下す際、被告による謝罪と反省の有無を考慮する。謝罪は自己を擁護することにはならないが、きわめて重要である。・・・日本の裁判官は、日本における裁判の主要な目的は罰することではなく矯正することにある、と強調する。矯正が目標であるならば、このことはなぜ日本人が警察官に「すみません」と言いがちであるのかをよく説明してくれる。

 一方、あまり反省しないアメリカ人についてはどうか。頭の良い弁護士たちは依頼人に対し、自分の責任を認めることにつながる発言は一切してはならないとアドバイスする。アメリカの裁判制度のもとにアメリカ人が行う謝罪は、本当の反省を示す手段ではなく、単なる交渉の手段なのである。



「謝るな」と言うアメリカの弁護士

 これについて、我妻氏らも以下のように指摘する。

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 だれかがもし、自動車事故の際にどう対応したらよいかとアメリカの弁護士に尋ねたとしたら、弁護士は「謝罪は責任を認めることになり、自分が不利になるだけでなく、保険会社との関係も損なうことになる」とアドバイスするであろう。

アメリカの弁護士の比率は日本の20倍    

 そのうえ、日本には2万人の弁護士がいるが、アメリカは人口も二倍あるが、弁護士の数は実に約100万人もいる。人口比で考えると、アメリカには日本の20倍の法曹が存在している。日本の人口当たりの民事訴訟の件数は、ドイツの5分の1、フランスの7分の1にすぎないが、世界一の訴訟社会として知られるアメリカと比べると、それ以上の差がある。

訴訟を勧めるアメリカの弁護士

 アメリカのケースでは、相手が弁護士を立ててくれば、こちらも弁護士を立てなければ歯が立たない。しかし、とくにアメリカの弁護士の多くは、勝算があると思えば、勝訴による多額の成功報酬を期待して、クライアントを説得して訴訟に持ち込む傾向がある。こんなところにも、日米の謝罪行動の違いの原因があると考えられる。 (高橋眞人)

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