fbpx

謝るのが美徳の日本人、謝らないのが美徳のアメリカ人(20)

エチオピア墜落事故の責任を認めたボーイング

 2019年3月10日、エチオピアのアデイスアベバからケニアのナイロビへ向かうエチオピア航空302便が、離陸からまもなく墜落し、乗員乗客157人全員が死亡した。事故から3か月近く経った5月29日、航空機メーカーの米ボーイング社のデニス・ミュレンバーグCEOはテレビのニュース番組のインタビューを通じて、同社製の737 Max機が起こした墜落事故の犠牲者に「個人的に」謝罪を表明した。

 ミュレンバーグ氏は、航空機用ソフトウェア修正プログラムの実装に失敗したことを認めたうえで、「私どもは、事故で犠牲者が出たことについて大変申し訳なく(sorry)思う。ご家族の方々が受けた影響について、お詫び申し上げます。私たちはご家族の皆さんを愛しています。そしてそれは決して変わりません。常に私たちとともにあります」と語った。そして「残念ながら、起きたことを変えることはできません。可能であれば、私もそうします。しかし、私が約束できるのは、安全を確保するために可能な限りのことをすべてやることです」と述べた。

(2019年5月29日「ビジネス・インサイダー」誌)

                         ・

 日本の謝罪会見であれば、謝罪の意思が曖昧で、犠牲者と遺族の方々への誠意が本当にあるのか疑ってしまう会見ではある。しかし、アメリカの常識では、これが、事故原因に責任を持つ航空機メーカーにとって最大限の誠意の表明であると思われる。何より自社の失敗に事故の原因があることを明確に認めている。

 大手の航空会社や航空機メーカーは、過去に何回も事故を繰り返していることから、こうした謝罪には慣れており、普通は、どのような謝罪をすれば、法的な責任を避けられると同時に、もっともその後の社会やメディアからのバッシングを避けられるかを概ね知っている。

ボーイングCEOの謝罪は「個人的」だった

 ミュレンバーグCEOがわざわざ「個人的に」と断って謝罪したのは、もし「会社として」「公的に」謝罪した場合、法的な責任が生じることを恐れて、そのように言うように弁護士からアドバイスがあったかもしれない。しかし、法的な不安があっても、CEOが姿を見せ、犠牲者に対して謝罪した。それは、レピュテーション・マネージメント(評判の管理)、つまり広報上の必要性があるためであろう。

米国にも謝罪を重視する学者や広報実務家もいる

 アメリカにおいても、企業による謝罪の重要性を強調する学者や広報実務家は存在する。テキサスA&M大学のティモシー・クームズ教授(危機コミュニケーション)は「さまざまな研究が、公的な謝罪は危機発生後の企業のダメージを回復させる有効な手法であることを示している。今や企業の謝罪は儀式のようなもので、危機が発生すれば幹部が無条件に実行すべきことなのだ」という。米ラトガース大学のリンダ・スタマト教授(公共政策)は以下のように書いている。

「謝罪をしない謝罪」に気を付けよ

 謝罪は組織を強くすることに役立つ。例えば、ある企業CEOが謝罪を行い、ものづくりにこだわって今後はより良いものを作ることに努め、そして自分自信は完璧ではないと認めるとする。従業員や顧客やその他に対し、自らの過失を認めて謝罪する。そして徐々に信頼を回復し、自らのリーダーシップへの自信も回復していく。効果的な企業の謝罪は、顧客の満足、信頼、ロイヤリティの試金石となりつつある。

 しかし、「謝罪をしない謝罪」に気を付けなければならない。「謝罪」が持つほかの意味としては、 例えば正当化や自らの行為や考え方を守ることがあるだろうが、こうした方向性は企業が不誠実ではないかとの問題を提起する。効果的な謝罪は説明を避けることでも、責任を回避することでもない。



 (リンダ・スタマト「Should Business Leaders Apologize? Why, When and How an Apology Matters」)

                             ・

危機管理の観点からも謝罪は重要

 これまで見てきたように、多くの研究者や広報専門家たちが、危機管理広報的な視点から企業による謝罪は重要であると主張している。彼らによれば、企業幹部らは自社の責任を認め、明確な形で謝罪する必要がある。 (高橋眞人)

おすすめ記事一覧

危機管理とメディア対応は密接不可分 企業に法律が関係する危機が発生したとき、普通は弁護士の意見を聞くと思います…

ハンカチを取り出し涙を何度も拭った社長 企業による下手な謝罪は時に状況を悪化させる。旭化学工業は住宅施工データ…

今やSNSはフェイクニュースの嵐 コミュニケーション技術が日進月歩で進化する状況にあって、SNSは今や正しい情…

日米の謝罪をめぐる文化ギャップ 企業による謝罪の件数はここ数十年の間に激増している。これは日本だけに限らず、世…

2018年9月17日、異色の天才経営者イーロン・マスク氏の宇宙旅行会社「スペースX」が売り出した月旅行の民間人…

            新聞協会発表の新聞発行部数(ガベージニュース) ◆         ◆        …

私用メール問題で謝罪を拒否し続けたヒラリー・クリントン  オバマ政権で国務長官を務めた元弁護士のヒラリー・クリ…

SEOは自分でもかなりのところまでできる SEOとはSearch Engine Optimizationの略、…

米国カリフォルニア州でいまだに燃え盛っている大規模な山火事では、犠牲者の数が74人に上るなど、同州の山火事とし…

アメリカ人なら知らない人はいない大人気ドラマ 米ABCの政治ドラマ「スキャンダル」のほとんどのシリーズを踏破し…

インターネットなどのメディアを通じて情報(コンテンツ)を提供し、自社の周囲にファンをつくっていく考え方を「コン…

バイトテロを完全に防ぐのはむずかしい 近年、「バイトテロ」という事象が大流行りです。時給千円程度のアルバイトは…