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謝るのが美徳の日本人、謝らないのが美徳のアメリカ人(21)

涙を拭い逆効果となった旭化成の謝罪会見

 企業による下手な謝罪は時に状況を悪化させる。旭化成は住宅施工データを改ざんしたことが明るみになったことから、2015年10月20日に記者会見を開いて謝罪した。同社の浅野敏雄社長はカメラマンのフラッシュがたかれる中、7秒間深く頭を下げた。記者会見開始から30分経過したとき、浅野社長は左手をズボンのポケットに入れ、ハンカチを取り出して、何度も涙を拭った。カメラのシャッターの音が部屋中に鳴り響いた。

 これについて、危機管理を専門とする米NBCユニバーサル放送研究所のベン・ヘイモウィッツ副所長は「涙はその人の弱さを表わす。 泣きたいのは建設会社ではなく、住人のほうである。危機状況下において経営トップは、精神的、肉体的、そして知的な強靭さが求められるため、トップの態度は消費者を不安にさせることがある」と指摘している。

謝罪によって報道が完結する

 本来、企業が謝罪を行う目的として、被害者や一般消費者の気持ちを和らげることのほかに、その企業の不祥事やスキャンダルに関するメディア報道をストップさせることがある。メディア論を専門とするヘブライ大学のゾハー・カンプ教授 は以下のように述べている。

 謝罪は新聞、テレビ、ラジオのトーク番組など、さまざまなメディアのジャーナリストの媒介によって伝えられる。ジャーナリストが積極的な関与していることは明らかだ。なぜならジャーナリストは、まず企業による謝罪という社会的ドラマを構成し、次にそのドラマの各段階でさまざまな役割を果たすからだ。謝罪によってメディア報道が収束し得る。メディアにとっては、謝罪が行われることで中心的な問題が終了し、不祥事も終わるのだ」 と述べている。



(ティモシー・クームズ「An Overview of Challenges Facing Collective Apologies: Their Use in the Corporate World」 )

謝罪が「儀式化」すればどうなるのか

 しかしながら、謝罪が「儀式」化されてしまった結果、危機発生後のレピュテーション・マネジメント(評判の管理)に貢献するプラス効果を失ったと主張する人々もいる。そして、もちろん、公の謝罪はしたくないと考える企業経営者たちもいる。ティモシー・クームズ 氏(危機コミュニケ―ション)は「経営者は、不祥事がステークホルダーのネガティブな反応を引き出してしまうという意味で、不祥事を心配している。不祥事は少なくとも次の四つをもたらす。その四つとは、 (1) 企業に対する怒り (2) イメージの低下 (3) クチコミによるネガティブな噂や書き込みの増加 (4) 商品の購買意欲の減退である」と指摘している。

アメリカには「企業は謝りすぎる」との意見も

       企業は謝り過ぎていると警鐘を鳴らす専門家もいる。ビジネスコンサルタントのジーン・マークス氏は次のように指摘する。「①企業が謝罪すれば顧客との関係が変化してしまう、②謝罪はしばしば空虚で本筋とは無関係であることが多い、③謝罪はより多くのコストをもたらす」。

「ビデオの謝罪さえ危険」という専門家も

 米NBCユニバーサルのベン・ヘイモウィッツ副社長も、以下のように謝罪の危険性を指摘している。

 ビデオを通じたCEOの謝罪は、逆効果を招くため危険である。謝罪の文章的内容が大したネガティブな影響を与えなかったとしても、不適切な表情が株価に大きなダメージを与えてしまう危険性がある。ほんのわずかな不快な表情や不適切な笑みが、評判を損ない、株価を急落させてしまう。

プルデンシャル生命シンガポールのウィルフ・ブラックバーンCEOは、顧客に対する誤った保険料引落しについて同社フェイスブックページに掲載したビデオを通じて謝罪した。(2018年5月28日)

 それを言えば、ビデオによる謝罪より、実際のフェイス・トゥー・フェイスの謝罪会見のほうがさらに危険であろう。それでも日本では、企業の不祥事に際しては、一本筋の通った「誠意」ある謝罪会見を求める。ところが、アメリカでは、ビデオによる謝罪でさえ危険だと主張する専門家がいるということだ。(高橋眞人)

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