コンテンツマーケティングとネイティブアドはどう違う?

デジタルマーケティングにおいて、今後は「コンテンツマーケティング」が成功のカギだと言われています。しかし、この言葉の意味が十分に理解されていないうえ、「ブランドコンテンツ」や「ネイティブアド」といった、よく似たい概念との間で取り違えや混乱が起きています。ここで一度、この三者が互いにどう違うのかを明確にしておきましょう。

若い人々の考え方が変化してきている

マーケティングの世界は、現代の人々の考え方、好みが大きく変化しているのに対応して、進化しつつあります。とくに10~30代の若い人々は、押し付けがましい宣伝手法を好まないため、従来の広告的手法ではもはや機能しなくなってきています。彼らは、購入するブランドを選ぶとき、そのブランドとの間で良好な経験があり、信頼関係があることを重視しています。商品やサービスを一度購入すればすぐに忘れてしまうのではなく、そのブランドとの間で意味のあるつながりを持つことを重視しているのです。

意味のあるつながりを構築するコンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングは、企業がまさにその「意味のあるつながり」を構築するために考案された手法です。「ブランドコンテンツ」とは、企業が「コンテンツマーケティング」の手法を用いて制作したコンテンツ、つまり「ブランドが自らのために制作したコンテンツ」のことです。米国の調査によれば、顧客の61%が、自前のコンテンツを制作しているブランドから商品を購入する可能性が高いと回答しています。それこそが、企業が自社のためのコンテンツを制作すべき理由です。

従来の広告的な発想とは根本的に異なる

ブランド化されたコンテンツの形式はさまざまです。記事や動画がもっともポピュラーなものですが、ポッドキャストやグラフィックスなどもあり得ます。コンテンツマーケティングの考え方は、従来の広告市場が飽和状態にあることに対応して生まれてきたもので、「Buy me(私を買って)」を基本とする従来の広告の発想とはかけ離れています。

製品より価値やストーリーに重きがある

ブランドコンテンツは、顧客の感情を喚起し、製品を売り込むのではなく、顧客の心理を自社ブランドに引き寄せるのです。実際にブランドコンテンツは、販売や注文については語りません。ブランドコンテンツは、通常の広告コピーやセールスライティングとはまったく異なるレベルで顧客を教育するか、または楽しませることを目的としています。売りつけるのではなく、自社商品やブランドに関する話題を提供するのです。製品自体よりも、価値が大切なのです。ストーリーを語るのです。

ネイティブアドとは広告に見えない広告

一方、「ネイティブアド」という言葉もあり、「コンテンツマーケティング」「ブランドコンテンツ」と混同されがちです。両者はどこが違うのでしょうか?

「ネイティブアド」とは、広告の一種です。購入した広告スペースを使います。そこに、いかにもメディア企業が制作したかのように見える記事や動画などを流し込むものです。けれども、メディアスペースをお金で購入しているのですから、やはり広告です。というわけで、メディア企業や広告代理店が広告メニューの一つとして販売しています。たとえば、オンライン広告であれば、バナー広告を買うか、リスティング広告を買うか、ソーシャルメディア広告を買うか、それともネイティブアドを買うか、といった選択肢になったりするかもしれません。

広告表記の問題でときどきトラブルが発生

ですから、一見して広告とわからないものがほとんどです。ディスプレイ広告などとは異なり、広告のようには見えません。 それらはメディア企業が制作した編集記事であるように見えます。そのため、広告倫理上の問題から、「広告主は広告であることがわかるようにどこかに明記しなければならない」といったガイドラインが各国で決められており、時々、ネイティブアドの一部がこうしたガイドラインに抵触している可能性があると指摘され、問題となっています。

ブランドコンテンツは基本的には非広告である

一方、ブランドコンテンツは、基本的にはメディア企業から購入した広告スペースを使わず、自社のサイトやチャンネルを使うという意味で、いわゆる広告ではありません。むしろ、商品やサービスを売る企業が、同時にメディア企業のように編集部を持ち、自社のためにコンテンツを制作・配信していると考えると分かりやすいでしょう。但し実際には、ネイティブアドではあるけれども、そのコンテンツを「ブランド化されたコンテンツ」という意味で、「ブランドコンテンツ」と呼ぶ場合もあるようです。その場合には、両者の意味はかぶっています。(高橋眞人)

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