欧米社会で急ピッチで進むジェンダーバイアスの撲滅
グーグルのGメールが提供するスマートコンポーズ機能とは、文を途中まで書きかけるとその後に続くと予想される残りの文が自動的に提案されるという、きわめて賢いサービスです。そのスマートコンポーズ機能で、書いている文章が英文である場合、近頃はその自動的に提案される英語の文章から「he」(彼)や「she」(彼女)といった代名詞が使われないようになっています。これは性別代名詞を使用することによって性差別(ジェンダーバイアス)が生じることを防ぐため、欧米社会で近年広まっている動きの一環です。
ジェンダーバイアスの撤廃を追求するグーグル
フランス語、イタリア語、スペイン語など名詞に男性形と女性形が存在する言語がありますが、グーグル翻訳でこれらの言語に翻訳するときも、性差別が起きないように、2019年12月から、選択肢を設けて性別を選択できるようになりました。英語や日本語では「外科医」は「外科医」ですが(「女医」という言葉はあるにしても)、これらの性別のある言語では「男性外科医」と「女性外科医」というそれぞれの名詞が存在しているためです。
これまでは、「投資家」が入った文を翻訳するとき、自動的に「he」だけが表示されていましたが、それだと投資家が「she」ではないという先入観が含まれてしまっているというわけです。グーグルでは「会社全体で公平性を促進し、機械学習の偏りを減らす努力が行われている」と述べています。
欧米人とのコミュニケーションでは注意すべきジェンダー問題
これは多くの方々が聞き知っていることだとは思いますが、日常使用する言葉でも、「salesman」→「salesperson」、「man」→「humankind」、「sportsman」→「athlete」、「actress」→「actor」、「chairman」→「chairperson」、「stewardess」→「flight attendant」「cabin attendant」など、ジェンダーバイアスを避けるための言い換えが、至るところで官民により推奨されています。欧米社会では、これらの動きが年々、急ピッチで進んでいることから、日本人も英文(欧文)を作成するとき、欧米企業とビジネスをするときに気に留めておきたい点です。(高橋眞人)