オンライン教育革命でいじめ・自殺・不登校をゼロにできる(上)

オンライン教育のメリットはなにか

新型コロナの脅威のため、多くの大学や専門学校の授業がオンラインに移行した。教員たちは新しい授業スタイルへの適合のため、多くの時間を費やし、苦労をしているようだ。一部の学生たちは「授業の質が低下したため、学費を下げよ」と要求し始めている。しかし、全体としてはなんとか実現にこぎつけている。米国、カナダや欧州の国々では、小中高校の授業もオンライン教育に移行した。これは日本の、そして世界の教育にとって、革命的な出来事といってよいだろう。

伝統的な教育の概念が崩壊しつつある

伝統的な教育の概念が、劇的に変化したといえる。教室にいて授業を受けることが、もはや唯一の選択肢ではなくなった。背景として、インターネットと新しいアプリ、ネット教材が次々と登場していることがある。今日では、コンピューターにアクセスさえすれば、いつでもどこでも質の高い教育を受けることができる。私たちはオンライン教育革命という新しい時代に突入したといえる。それでは、オンライン教育のメリットは何だろうか?

1.学習の柔軟性が確保できる

教師と生徒は独自の学習段階、学習ペースを設定できる。同じ年齢だからといって、クラスの全員が同じ到達レベルではないし、学習スピードも大いに違いがある。それをひとまとめにして一律に教えること自体に相当な無理があったといえる。選択肢が増えれば、その子供に合ったカリキュラムを編成できる。これにより、授業についていけないとか、つまらな過ぎるといった不満やトラブルは激減するだろう。

2.幅広い選択肢を提供できる

大学などの高等教育ではもちろんのこと、小中高校においても、生徒の関心に合った選択科目を無限に増やすことができる。もちろん、同じ科目でも、到達度によって多くのレベルを用意することが可能だ。たとえば、音楽作曲に興味がある小学生たちに作曲の授業を用意してもよいし、量子物理学に関心がある高校生にその授業を提供してもよい。スワヒリ語を学びたい中学生にその授業を受けさせたってよいのだ。

3.どこからでもアクセスできる

子供がどこにいても、インターネットにアクセスさえできれば、学習できる。教師も同じことで、世界中のどこに住んでいても教えることが可能だ。つまり、お互いの通勤・通学時間やそのための交通費を節約できるだけでなく、余裕のできた時間にほかの重要な事柄を行うことができるようになる。

4.最高の質の教育を提供できる

オンライン教育では、時間と場所と人数の制約がなくなるため、教えるのが上手な教師の授業だけを受けることが可能となる。またそれぞれの科目の専門家の授業を受けられるようになる。音楽や美術だけでなく、道徳教育の専門家、ICT技術の専門家、環境教育の専門家、政治や法律や医学の専門家の授業があったっていい。教育を受ける子供たちにとって、これほど素晴らしい贈り物はないのではないか。

5.少人数クラスが実現できる

オンライン教育を導入するとさまざまな時間が節約できるうえ、多くの授業の選択肢が用意できるようになるため、従来よりもぐっと少人数のクラスを実現できる。そうなれば、教師から生徒に対するフィードバックもより細かく丁寧にできるようになる。クラスが少人数になれば、質疑のほかディスカッションの時間も取れるようになるだろう。

6.多くのアプリやオンライン教材を利用できる

教育に有効な数々のアプリやマルチメディア教材が次々と登場しつつある。オンライン教育なら、これらのアプリや教材を上手く組み合わせ、きわめて効率的で飽きさせない授業をつくり上げることができるようになる。

7. 教育コストを大きく節減できる

まず固定の教室を大きく減らすことができる。上手くリソース配分すれば、専任(フルタイム)の教師の数も大きく減らすことができるだろう。教師の通勤コストも不要となる。これと関連して、教師の雑用を大きく減らすことができる。教師の本来の使命は授業科目を教育することにある。部活の指導や行事の準備、事務雑用といった本来使命以外の雑事を激減させられるチャンスだ。

8.日本はオンライン教育先進国を目指せる

日本のICT技術は米国に次いで世界トップレベルにあるうえ、教育技術やカリキュラムに関しても進んでいるほうだといってよい。オンライン教育に関しては遅れているかもしれないが、国ぐるみ、官民で目指すならば、近い将来、世界でもっとも進んだオンライン教育大国になることが可能だ。

9.オンライン学習経験が職業生活に生きる

従来の集団教育は、工場労働や軍隊生活に向いている。現在の社会生活とはどんなものだろうか。ホワイトカラーが50%を超え、日本人は今後ますますインターネットを初めとするデジタル技術を活用し、同僚とオンラインでディスカッションし、PCで書類や図面を作成し、パワーポイントやマルチメディア資料でプレゼンしなければならなくなる。工場労働は(良かれあしかれ)ロボットや外国人労働者が日本人にとって代わっていくだろう。また、会社への通勤は必要なくなっているかもしれない。そう考えていくと、オンライン教育への移行は必然的なものといえる。

10.従来の教育の制度疲労を刷新できる

もっとも重要なメリットとして、いじめ、自殺、不登校をゼロにできる可能性が生まれてくる。これまでの集団教育のあり方は、子供たちを無理やり一つの教室に押し込め、いや自分の椅子に一日中縛り付け、レベルの合わない授業を受けさせられ、気の合わない意地悪なクラスメートと何年間も一緒に過ごさねばならず、その結果として、いじめや不登校、不適応・体の不調、自殺、暴力、学級崩壊が後を絶たない。これらはすべて140年間続いてきた旧来の教育システムの制度疲労によるものだ。現在の世の中に合わなくなっているといえる。こうした問題を解決するには、結局のところ、無理やり一律に詰め込みを行う「集団授業」を変革するよりほかにない。

オンライン教育に対する懐疑論も根強く存在する。それは理解できる。長い間、教室という固定の空間で行われてきた教育の姿しか、我々は経験してきていないためだ。これらについては(下)で一つひとつ検討してみたい。(高橋眞人)

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