モンスター顧客、モンスター上司に悩まされている人へ

働く人々を憂うつにさせ、健康を壊す最大の原因は、おそらくモンスタークライアントやモンスター上司の存在です。叱責や批判、不満を一方的にぶつけてくる人、嫌みを言ったり人格的攻撃をしたりする人。すぐに自分を飛び越えて上司にクレームを入れてくる人。そのうえ指示の内容がさっぱり分からない。もちろん、こちらに対する愛情のかけらも感じられない。こんな人と一緒に仕事をするのが苦痛で仕方ないのに、お客さんだから、上司だからと我慢しなければならない。こんなとき、会社員やフリーランスは精神的に疲弊し、時により立ち直れなくなってしまいます。

不要な我慢を強い続けるのはブラック企業

「お客様が第一」とはよく言われますが、労働とはまずは自分のために行うものです。自分が楽しくなかったり健康を壊してしまったりしては、なんにもなりません。私の意見では、一定の許容範囲を超えても我慢し続けなければならないようなら、その会社はブラック企業です。

異常人格者はなかなか直らない

そのようなひどいモンスター型、クレイマー型の人は大抵の場合、いうなれば一種の異常人格者です。自分だけでなく、ほかの多くの人が被害を被っています。本人にもある程度自覚がある場合が多いものです。自覚があっても、直せないでいるのです。

いちばん良いのは付き合わないことだが

さて、こういう人に対してどう対応すべきか。基本的には、このような性格は多少注意されたところで簡単には直りませんから、付き合わないこと、仕事をお断りすること、担当者を変えてもらうこと、異動させてもらうことがベストです。

といっても、お客さんや上司である場合、そんなに簡単に縁を切るわけにもいかないというのが実態でしょう。だからこそ、精神的に疲労困ぱいしてしまうのです。

上司に相談して解決するものならよいが・・・

多くの人がとる方法は、自分の上司に相談し、そっと担当替え、配属替えしてもらうというものです。それで上手く運べばいいでしょう。しかし、組織というものはなかなか一人の都合で簡単に異動を許してもらえないものです。わかってもらえなかったり、逆に叱咤激励され、問題が解決しないケースも少なくありません。

自分から休む、退社してしまう方法はお勧めできない

そして少なくない人が、その相手と口も聞きたくなくなり、会社にも行きたくなくなり、遂には仕事を休んでしまう。そしてうつ病で長期休暇に入るか、自己都合退社してしまう。その気持ちもよく分かるのですが、このパターンはあまりお勧めできません。何よりも本人にとって損な終わり方です。

まず、会社の周囲の人々が「なにが問題だったのか」を十分に理解することなく、問題をあやふやにして先送りしてしまうことになるからです。場合によっては、会社を辞めた人、長期休暇に陥った人が精神的に弱かったから、未熟だったから、と片付けられてしまうかもしれません。それでは、会社のために一生懸命に耐えた自分にとってみれば、えらく不公平な話です。

まずは正々堂々と自己主張すること

私からそういう境遇の人にアドバイスするならば、正々堂々とその相手に「仰っている意味がよく分かりません。私にも分かるようにご説明お願いします」「至らないのは私の責任ですが、私には荷が重すぎます。担当者を変えて下さい」「人格的な攻撃はやめてください」「感情的に人を非難するのはやめてください」と、まずは率直に申し入れるべきです。性格に問題のある相手ですから、逆切れしたり、倍返しで非難を受けたりることが十分にあり得るでしょう。でも、その摩擦を恐れて、正当な自己主張、つまり対決することを避けて通ってはよくありません。

その際、あなたが強い主張をおこなうことは良いですが、感情的になったり、相手の人間性を非難したりしてはいけません。それでは、相手と同じ土俵に立ってしまうことになります。

密室ではなくなるべくオープンな場で議論する

そして、その対決は密室の中でおこなうより、できるだけ多くの同僚やほかの上司がいる中で、もしくは相手の同僚もいる中で、オープンに堂々と行うべきです。こうした緊張感の伴う会話を密室でひそひそと行いたがる人が多いのですが、実際には、どちらに非があるのか、できるだけ多くの人に知ってもらったほうがあなたのためになるのです。

あなたの主張が正しければ味方は増える

あなたの主張が正しくフェアであれば、あなたの同僚やほかの上司はみんなあなたの味方をしてくれるようになります。裁判が公開で行われるのと同じことです。だから、あなたはきわめて正しい主張をしなければなりません。自己中心的だったり幼稚な主張はダメです。自分の至らない点やミスがあったのなら、潔く認めて謝罪する必要があります。そのうえで、周囲の人々に公平に判断してもらうのです。

みんながあなたの味方をしてくれれば、そのクライアントを会社がすんなりお断りしてくれるかもしれません。上司を変えてくれるかもしれません。少なくとも、あなたがうつ病になったり、自己都合退社したりしなくてもよくなるでしょう。

不要な摩擦を起こし、相手に恥をかかせたということで、職場にいづらくなるかもしれないと心配する人もいるかもしれません。しかし、あなたの主張が本当に正しければ、あなたの立場は必ず良い方向に引き上げられるでしょう。あなたの主張が正しいのに会社が相手の味方をするようなら、そんな会社はやはりブラック企業です。見切りをつけたほうがよいでしょう。

最近の若い人はなぜ対決を嫌うのか

日本人の多く(とくに若い人々)は、人間関係の摩擦を嫌い、対決を嫌います。だから正当な自己主張をはっきりしない人が多いようです。それで、そのまま会社に来なくなってしまいます。それでは、人格異常者に対して不戦敗しているようなものです。自分の身は自分で守る。そんな気構えはほしいものです。

「正当な自己主張」のスキルも磨かないと習得できない

昨今の日本の学校教育や家庭教育では、子どもたちに、対決や摩擦を避け、どんなときでも和やかに仲良くするように教えているのではないでしょうか。そんなところにも、摩擦を避けて正当な自己主張ができない原因があるように思えます。自分が正しいことを周囲に認めさせるのは、一種のスキルです。磨かなければ、身につかないたぐいのものです。だからこそ、欧米では古代ギリシャの代より、雄弁術(elocution)をきわめて重視して教育してきているのです。

人間的に強くなるとはそういうこと

そうはいっても、嫌な相手にそこまで立ち向かう気力がない、という人もいるかもしれません。でも、自分の精神的健康を守って楽しく生きていくためには、ときには摩擦を恐れず正当な自己主張をおこなうことが、実はきわめて大切ではないかと思います。人間的に強くなるとは、そういうことではないでしょうか。

こうした社内トラブル対処法も、組織内コミュニケーションです。得意とするところですから、悩みのある方がいればコンサルします。(高橋眞人)

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