謝るのが美徳の日本人、謝らないのが美徳のアメリカ人(1)

日米の謝罪をめぐる文化ギャップ

企業による謝罪の件数はここ数十年の間に激増している。これは日本だけに限らず、世界的な傾向であるといえる。インターネットや内部告発の影響で不祥事やスキャンダルが発覚しやすくなっていることに加え、企業の社会に対する説明責任が重視されるようになってきたことが関係している。

謝罪会見は日本独特の文化

企業が公に謝罪を行うのは、消費者を含む社会からの信頼が損なわれたとき、または損なわれる恐れのあるとき、信頼をつなぎ留め、それ以上悪化するのを防ぎ、さらに信頼を回復するためである。企業による謝罪行動は、日本と北米の間では違いがあると多くの人が指摘している。たとえば、日本では、企業は日本独特の「謝罪会見」を開き、社長や幹部が深々とお辞儀をしてお詫びを述べる。そこに参加したマスコミのカメラは一斉にフラッシュをたき、記者たちは厳しい質問を浴びせかける。ここで企業幹部が対応を一歩間違えば、その企業の評判は著しく損なわれ、そのダメージはしばらく回復しない。ひどい場合には企業が立ちゆかず、潰れてしまう場合もある。これに対して、たとえばアメリカ企業の幹部は、マスコミやステークホルダーの前で公に謝罪することを極力避けようとし、その代わりに何とか釈明して理解を得ることに努力するケースが多い。

頻繁にお詫びをする日本人

日本人は個人としても、きわめて頻繁にお詫びし、頭を下げることで知られる、ある意味、世界の中でも特異な民族といえる。それに比べると、たとえばアメリカ人は日本人ほど明白な形で謝罪せず、代わりに自らの立場や状況を懸命に説明、釈明しようとする傾向にある。ヨーロッパや中国の様相も、日本よりはアメリカ型に近い。

えひめ丸のトラブルにも謝罪文化ギャップがあった

そんな国際間の謝罪に対する考え方の違いから、数々の深刻なトラブルが発生している。たとえば、2001年2月にハワイ・オアフ島沖で発生し、教員5人、生徒4人が死亡したえひめ丸の衝突・沈没事故では、犠牲者遺族が事故を引き起こした潜水艦グリーンビルの責任者に謝ってほしいと要望していたのに対して、スコット・ワドル艦長は遺族の前に姿を現さず、遺族や一般の日本人の米海軍に対する不信感は日に日に増大していった。こうしたすれ違いも、日本人とアメリカ人の間で公的な謝罪のイメージが食い違っていたことが原因にあったと考えられる。

ビジネスコミュニケーションとして重要な「謝罪のしかた」

このような謝罪行動をめぐる日米間の違いは、いったいどこからこの差が生まれて来たのか。不祥事と謝罪をめぐり日米間でしばしば文化的、コミュニケーション的な、そして時に非常に深刻な衝突が起きていることを考えれば、日本のビジネス社会にとって、あるいはコミュニケーションの領域に携わる人々にとって、このテーマの重要性は明白であろう。(高橋眞人)

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