職場の世代間ギャップをどう乗り越えるか(4)
日本の職場における「多様性」(ダイバーシティ)という場合、まずは男女共同参画と、世代(ジェネレーション)の多様性を考えなければなりません。高齢化と少子化の進展とともに、定年年齢の延長が求められています。職場の世代間ギャップを埋めるために、企業はどのような対策を打つことができるでしょうか?
4. 世代文化を超える研修を実施する
会社が提供する研修の目的は、従業員が指定された一定の時間、新しい世界に住む機会を与えることです。自らの快適なゾーン外の方法で業務を遂行することによって、新しい視点を獲得し、自分のアプローチと他者のアプローチの長所と短所を学ぶことができます。
メールを1日使わないトレーニング
たとえば、若い世代に対しては、まる一日間、電子メールやチャットに頼らず、対面コミュニケーションだけで業務を遂行するように求めます。年配の世代に対しては、チャットだけのコミュニケーションで業務をこなしてみるよう求めます。(お客様や取引先への対応に関してはむずかしいかもしれませんが、お客様にも意図を告げて決行してみるのも興味深い結果となる可能性があります)。
苦手分野をだれかに頼る関係も重要
従業員が自分の中で改善したい自分自身の弱点を発見し、その分野で自然に強い別の世代のだれかと提携するように奨励します。コミュニケーションの方法に関しては、各世代のメンバーが、どの世代に対しても有効なコミュニケーション手段を使えるようになることが重要です。
団塊の世代とX世代を職場から除いてはならない
放っておけば、職場がリモート化、モバイル化し、チーム自体もバーチャル化するにつれて、団塊の世代とX世代の一部は、新しいコミュニケーションに精通していない場合、職場に不適合となる可能性があります。上記のような取り組みは、将来の世代間文化ギャップの拡大と軋轢を回避するのに役立つでしょう。
デジタルツールが苦手なら学んでもらう
ミレニアル世代やZ世代はチャットやツイッター投稿などに慣れていますが、より伝統的で文法的に正確な話し方やライティング、さらにかしこまったフェイス・トゥー・フェイスの訪問やビジネスミーティングに関する研修・コーチングが必要である可能性があります。そこには礼儀の正しさや忍耐の重要性も含まれるかもしれません。実際に、テクノロジーに頼ってばかりいてコミュニケーションしていれば、職場における人間的繋がりや励まし、助け合いが薄れていく危険があります。対面でのコミュニケーションの価値とスピードを犠牲にすることの必要性を正当に理解してもらうことが重要です。
従業員がネガティブなステレオタイプを捨て、さまざまな世代がもたらす価値を認識し、必要に応じて他の人からトレーニングを求めるのに十分な謙虚さを保つ姿勢を意識的に奨励します。
メンター制度も相互主義が望ましい
メンターシッププログラムは、職場で世代の多様性を尊重できる良い方法です。異なる世代の従業員をペアにすることで、個人が同僚からもたらされた新しい視点を理解し、評価するのに役立ちます。そこで重要なことは、必ずしも一方的に指導するのではなく、お互いに得意な分野を学ぶ姿勢を持つ関係としたいものです。これこそが、日本における多様性(ダイバーシティ)とインクルージョンの差し迫った取り組みといえるのではないでしょうか。[完](高橋眞人)