新聞の衰退は社会をどう変えるか

            新聞協会発表の新聞発行部数(ガベージニュース)

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産経新聞の大リストラの衝撃

産経新聞社が大規模リストラに踏み切った。今年2月から、51歳以上の社員180人(全従業員の約1割)を対象に希望退職者を募っているとのこと。今年春の新卒採用はわずか2人(うち記者は1人)。前年の2018年の新卒入社は40人いた。さらに、2020年をめどに販売網を縮小し、首都圏と関西圏などに限定するという。全国紙からいわゆるブロック紙への戦線縮小だ。役員賞与はゼロで報酬も大幅カットだという。それもそのはず、インターネットで情報収集する人の増加に伴い、2008年まで200万部以上あった部数は、100万部を割り込むのも時間の問題となってきた。2018年4~9月の連結業績は約4億7千万円の大赤字であった。2018年度は30年ぶりの営業赤字に陥りそうだという。社員2千人のうち500~1000人をリストラする計画だという噂まである。私もちょうどその年齢枠に入る親しい知人も産経新聞には少なくないが、不安と動揺が渦巻いている。

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新聞の衰退は世界的な傾向

毎日新聞社の経営も厳しいようだ。産経、毎日に限らず、どの新聞社も部数の凋落が激しく、経営状態は悪化する一途である。欧米では、毎月のように新聞社が倒産したというニュースが飛び込んで来る。米国新聞業界のリーディングカンパニーである「ニューヨークタイムズ」でさえ、100人の従業員をレイオフせざるを得なかった。

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急速に変わるマーケティングの景色

新聞広告は、求人情報や家を探したい人々にとって必需品だったが、インターネットを活用した数々のマーケティング手法が急速に広がり、マーケティングの景色が急速に変わった。なかでもグーグルやフェイスブック、ヤフーといった多国籍IT企業が、ネット広告料金を独占的にかき集めている。そのため、新聞広告の需要が激減しており、新聞の広告モデルが音を立てて崩壊しつつある。

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信用を失いつつある新聞

新聞は信用も失いつつある。記事の捏造、切り取り報道による一面化、官僚を中心とする体制と一体化した論調、記者による犯罪・・・。それがネットで容易に暴かれることとなり、これまで異常に大きかった日本の新聞の権威も、遂に失墜しつつある。これは欧米でも、まったく同じようなことが起きている。たとえば、ニューヨークタイムズは、ジェイソン・ブレア事件というものを起こし、多くの読者を失った。ジェイソン・ブレアとは同紙の記者であったが、彼が行っていない場所で取材して報道しているかのような嘘の記事を書いていたことが発覚したのだ。彼はさらに、同紙の同僚記者からニュースを盗んだため、お縄となった。

米国の地方紙はあと5年で死に絶える

米ニューヨークタイムズ紙のディーン・バケット編集長は2019年5月の「国際ニュースメディア協会世界会議」で、「アメリカのジャーナリズムにおける最大の危機は地方ニュースの死である。私にも解決策は分からない。彼らのビジネスモデルはもう存在しない。地元の億万長者に買われた新聞を除き、アメリカのほとんどの地方紙は今後5年で死に絶えるだろう」と述べた。ピューリサーチの調査によれば、新聞の購読料を支払っている人はもうほとんどいない。販売部数は急落し続け、小さな新聞から次々と廃刊している。

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新聞は300年の役割を終えたのか

手書きの最初の新聞は16世紀のイタリア。印刷された新聞の発祥は1609年のドイツだった。 1650年には、世界初の日刊紙がドイツで創刊され、どんどん大衆の間に普及していった。 19世紀になると、都市人口の増加や社会変化に伴い、新聞の大衆化が進んだ。日本では、遅れて江戸時代末期に瓦版が始まった。現代の新聞の形はほぼ350年の歴史を持つが、いまそのメディアの主役としての役割を終えようとしている。

新聞ができる前の情報伝達は、人のクチコミだった。新聞全盛の時代が300年。この300年間、世界を牽引してきた新聞業界は衰退し、終焉を迎えつつある。永遠に繁栄する産業はあり得ない。そしていま、情報伝達の主役は、再びインターネットというデジタル技術を用いたクチコミに回帰を果たしつつあるといってよい。

もちろん、新聞という存在自体は、部数が減少し廃刊が続出しつつ、永い間続くであろう。また、新聞記者出身の職業ジャーナリストもインターネットを主戦場に移して、ほかのブロガーや専門家やユーチューバーなどと横一線で戦っていくことになる。

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新聞の衰退は民主主義に影響を与えるのか

新聞が衰退すると、民主主義のあり方に影響を与えると心配する見方もある。こればかりは、なんとも言えない。この手の不安は「日本に鉄道を輸入すれば、日本人は運動不足になって、平均寿命が短くなるのではないか」といった質問と似ている。技術革新に伴い、情報伝達のあり様が変われば、民主主義のあり方も必然的に変化を受けざるを得ない。

デジタル技術の進歩とともに新たな民主主義が生まれる

これまではごく一握りの新聞記者やテレビ記者、ディレクター、コメンテーターらが独占的に言論を支配していたが、いまではインターネットのお陰で、だれでもが政治でも社会でも国際問題でも自由に評論し、影響を与えられるようになった。そのほかの職業であっても、記者よりも知識、見識を持った人々はたくさんいる。これこそが「言論の民主主義」の進化であると思う。実に喜ばしいことではないか。

人々にはいろいろな人がいる。過激な思想を持つ人、近視眼的な人、低俗なことを言う人・・・。憶測やフェイクもあり、混乱も起きる。でもそれが世の中というものであり、民主主義社会にあって、それらの人々の「社会への口出し」を禁じる権利はだれにもないのではなかろうか。「新聞記者など限られた職業以外は社会への口出しを禁じる」などと言える権利はだれにもない。

ヨーロッパで宗教革命が起きたとき、改革派はラテン語のみで書かれていた聖書を各国語に翻訳し普及する道を選んだ。守旧派からは「とんでもないことだ」と非難されたが、一般の人々に聖書を広く普及させる功労者となった。だが、このときだって守旧派は「そんなことをしたら、勝手な翻訳、誤った解釈をする者が多く現れて、キリスト教の教義が汚染されてしまう。聖書はラテン語を勉強した者だけが読めるように維持すべきだ」と言ったはずだ。そう、いまの「新聞記者は取材の訓練を受けている。だれにでもできることではない。新聞は正しく信頼できるが、インターネットは危険だ」という考え方が、かつての守旧派の意見とよく似ている。

いままでも新聞記者の存在だけが、本当に民主主義の砦だったのか。その点にだって議論はある。たとえば、巨大化され、高度にシステム化された新聞産業こそ、体制の虜になっていたのではないだろうか。むしろ、インターネット上の自由な言論を守ることこそが、現代の民主主義の発展に繋がるのだという考えもあり、私はどちらかというとそちらを支持するが、いかがであろうか。(高橋眞人)

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