その場で発言するのが苦手な人はどうしたらいいか
会議などでその場でなにかを発言しなければならない、そんな状況が苦手な人がいるものです。私も若い頃はそうでした。そんな人でも、事前にパワーポイントなどの資料をつくるようなプレゼンならなんとかなる、といった場合は多いですね。それは資料があることで、発言する内容がおのずから規定されているためです。事前に十分に準備する時間がない場合は、そうはいきません。
切り抜けられないとあなたの評価は下がるかも
会議だけではありません。あなたのお客さんに電話をかけたら、あなたに対して予想もしなかったような非難をし始めたとします。こうしたときも、準備時間がなく、その場でなんとか上手く返答しなければなりません。
とくになんらかのビジネスをしている人は、こうした即座の反応を求められる機会が毎日のように起こります。しかし、即座の発言が苦手な人だと、上手く対応できずに、困った状況に陥りがちです。
お客様からのクレームに対して、(お詫びも含めて)上手く切り抜けることができなければ、これまたあなたの評価は大いに下がるでしょう。
印象的な良い発言をすれば評価は高くなる
多くの組織では、会議の中での発言が、その人の評価にダイレクトに結びつく場合がしばしばあります。印象的な良い発言をすれば、あなたの評価は高くなり、おかしな発言をすれば評価は低くなります。発言しなければ、なんの印象も残りません。
こうした即座の反応が上手くこなせれば、日々、同僚やお客さんとの信頼関係を築くことも可能となります。
即座のスピーチは準備するプレゼンとはまったく違うスキル
即座に反応するのがむずかしいのはなぜでしょうか?それは準備に十分な時間がないことです。十分に準備されたことを話すこととは異なる性質のスキルだからです。即座のスピーチは十分に予め計画を立てられないため、良くも悪くも自分の心にあることを言うだけです。
短時間のうちに1つか2つのポイントを考える
プレゼンの準備をするほどの事前の時間はありませんが、会議の場合はもちろんですが、一対一の対話の場合でも、相手の話を聞きながら、自分が話すべきポイントぐらいは考える時間があるものです。会議の場合は、とくにその会議の目的が何であるのか、何が期待されているのかを前提に考えて下さい。
あなたの狙いに沿った1つか2つのポイント(これをメッセージといいます)をつくることができれば、それにしたがって、上手な発言ができるはずです。その主張の理由についても、それぞれ考えます。
ポイントが決まらないうちは発言しない
1対1の対話の場合は、相手の話を聞きながら、自分の意見をまとめますが、状況が十全に分からないことが多いので、相手に冷静に質問するなどして意見をまとめて下さい。メモやノートにポイントを書ければベストです。きっちりポイントをまとめるために、できる限りそうすべきです。
自分の意見のポイントが決まらないうちは、意見を言ってはなりません。なにか言わねばならないときはそれ以外の質問や状況確認などで時間を稼いでください。
聴衆にどう聞こえるかも併せて考える
その発言のポイントが、聴衆にどう聞こえるか、どう反応するかも併せて考えるようにして下さい。反発を買わないか、不遜に聞こえないか、いい加減な意見に聞こえないか、意味があると思ってもらえるか・・・。
いざ発言するときは、自信をもって、きっぱりと言うことです。自信なさげであったり、おどおどしたり、興奮して話したりしないようにして下さい。
どんなトーンで話すべきかも検討する
即座のやり取りでは、話す内容だけでなく、声のトーン、スピード、抑揚、そして明瞭さがその評価に関わってきます。 予めどんなトーンで話すべきか、そこまで考えて置ければ完璧です。
1つのメッセージにフォーカスすること
発言するときは、1つの重要なポイント(メインメッセージ)に焦点を当てて話します。 話が拡散したり、支離滅裂になっては、失敗します。メッセージがあり、その理由、しかも具体的な理由ならなおさら良いです。
気軽な場で練習してみる
さらに、練習することです。どうやって練習したらよいでしょうか?重大な会議やお客さんとの会話ではなく、まずは気軽なミーティングや会話の中で練習してみることです。それはいつもやっている?いや、発言の前にそのポイントを考えてから発言している人は、意外に少ないものです。つまりほとんどの人は、その場に頭に浮かんだことをただしゃべっているだけですから。
もう一つの練習方法は、家族や友人に、予想もしないような質問を振ってもらい、その場で答える練習をすることです。この場合、練習なので質問はなんでも構いません。「職場は固定席とフリーアドレスのどちらがいいと思いますか?」「大都市と郊外と田舎の生活はどれが好きですか?」「芸能人の不倫の問題についてどう思いますか?」「新型コロナウイルスへの日本の対応をどう思いますか?」などなど。
学校で教えてくれない即興スピーキング
即座に自分の意見を述べることは、毎日さまざまな場面で遭遇する私たちにとっては、大変重要なスキルですが、こうした重要なコミュニケーションスキルを日本の学校ではちっとも教えてくれません。準備したことを話すプレゼンテーションの勉強は最近になって少しずつ増えてきましたが、即興のスピーキングはほぼゼロといってよいでしょう。
日本の学校にパブリックスピーキングの導入を
学校はそんなことを学ぶ場ではないって?そんなことはありません。実際に、たとえば米国の中学や高校の「パブリック・スピーキング」の授業の中には「即興スピーキング」という項目があり、その勉強と練習をしているのです。それが、私が日本の学校にも「パブリック・スピーキング」の授業を導入すべきだと言っている理由なのです。(高橋眞人)