オンライン教育革命でいじめ・自殺・不登校をゼロにできる(下)

学校でいじめ自殺が発生し、これを学校側や教育委員会が謝罪する事件が後を絶たない。中学校だけでも、全国の実に約12万人の中学生(3.6%)が不登校となっている。子供たちが通う学校は、日本社会の中である意味もっとも窮屈で、人権が保障されない酷い場所となった。現在は学校に行かなければ教育は受けられない。憲法が規定する「子女に教育を受けさせる義務」、裏返せば子供たちの「教育を受ける権利」はどうなってしまったのか?

今年前半は自殺者が1~2割の減少、一斉休校・テレワークの影響か

その証拠に、警察の発表によると、今年(2020年)の自殺者数は2月が前年比10%減、3月が6%減、4月が18%減、5月が18%減、6月が8%減だった。各月、1~2割という大幅な減少だ。つまり、ウイルスや経済苦境が人を殺しているのではなく、実は学校や職場が人を殺していたのだということが改めてデータで示されたといえる。

     新型コロナで一斉休校・テレワークとなった今年前半は自殺者が激減した

そこで、オンライン教育革命を通じて140年間続いた旧式の教育システムの弊害を刷新し、いじめ、自殺、不登校をゼロにできる可能性があるというのが私の主張だ。といっても、オンライン教育への反論や抵抗感が根強く存在している。これら一つひとつを検討してみたい。

1.オンラインでは教育の質が低下するのではないか?

これは現在が、オンライン授業が始まったばかりの草創期だから、ある意味当然のことだ。しかし考えてみてほしい。よしもと新喜劇で見る漫才と、テレビのバラエティ番組で見る漫才とでは、生で見るほうが圧倒的に質が高いのだろうか?決してそんなことはない。むしろテレビ放送では、ビデオ録画やテロップやビジュアル・音響効果を通じてより面白いものにできる可能性が出てくる。つまり、オンラインになるとよりつまらない授業になってしまうというならば、それはオンライン授業のやり方がまだよく研究されていないだけだ。

2.インターネットやPC等の環境がない家庭がある

インターネットは今や、教育だけでなく生活の質を左右する必要不可欠なインフラになりつつある。全家庭とまではいかなくても、子供のいる全世帯にネット環境及びノートPCまたはノートパッドなどのデバイスを行き渡らせることは国家的使命と考えるべきだ。生活保護など低収入の家庭には国が積極的に無料貸与すべきだ。その代わりに、授業のオンライン化により、ランドセルや通学用の制服・洋服・靴の購入費はいらなくなるか激減できる。

3.子供がPCの前に長い時間座っていられない

小学校低学年なら、多くの子供はその通りだろう。その年齢はやはり学校という場が必要かもしれない。PCの前に確実に座っていられるのは小学校高学年からだ。中学年の3~4年生は過渡期として徐々にオンライン学習を増やしていけばよい。周りの子供ができるのに、特定の子供だけPCの前に座っていられないというなら、教育委員会から教育支援員を家庭に派遣して解決したらよいのではないか。教師である必要はなく、資格も不要だ。一方、学校では、これまで雇っていた大量の補助教員、支援員、指導員、用務員、警備員、事務職員といった人員の多くを削減できるかもしれず、そこで浮いた予算で家庭向け教育支援員を雇用できるだろう。

4.体育、図画工作・美術、音楽、技術・家庭科などの実技科目はオンラインではできないのでは?

オンラインでどうしてもできない体育実技などは学校で行う必要があるだろう。ただし、体育実技にしても家庭でできる内容は実は多くあり、どうしても学校でなければできない実技だけ学校で行えばいい。図画工作・美術、音楽、技術・家庭科も同じである。ほとんどの内容は自宅でやればできそうだ。合奏やコーラスなど、どうしても学校でなければできないものを学校でやればいい。要はこれまでその必要がなかったため、やり方を考えてこなかったということだ。また、体育実技や合奏を行うのに、それが本当に学校でなければならないのかという疑問提起もできる。たとえば、町のスポーツジムやサッカー場やプールを借りて体育実技を行ったっていいし、市民ミニホールを借りて合奏やコーラスをやったっていいわけだ。

5.部活動、課外活動はどうするのか?

部活動も同じである。スポーツや音楽などの部活動は学校に行ってやってもいいし、それ以外の場所でできる場合もある。ただ、根本的な問題として、学校は本来、教科科目を教える場所であって、課外活動を行う場所ではないから、教師の負担軽減、本来業務への集中のためにも、一般論として課外活動はなるべく民間に任せ、学校側の課外活動に対する責任の重荷を軽くしてやるのが望ましいと思われる。

6.運動会や学芸会、入学式・卒業式などの行事はどうするのか?

まず、それらの行事がいったい何の教育目的のために時間をかけて行わねばならないのか、よく考え直したほうがいい。仮に「勉強が苦手だが運動が得意な子供が活躍できる場面をつくってあげたい」というのが目的だとすれば、民間のスポーツクラブでもできることだ。「健やかな生活のため運動の習慣をつけさせる」が目的だとすれば、必ずしも運動会が必要ということにはならず、自宅でできる体操やトレーニングやストレッチでも十分なのかもしれない。いずれにしても、学校になんでもやらせるという現在の風潮とはもうお別れして、学校を教科の学習という本来使命に戻ってもらうべきだろう。入学式などの式典は学校で行われるべきだろうが、現在のように多くの時間をかけて準備するのが本当に必要なことなのかどうか、別途考えた方がよい。

7.子供たちは学校で共同生活することで切磋琢磨し社会性を身に着けられる

果たしてそうなのだろうか?現在の学校はむしろ、いじめがはびこり、意見があっても目立つことを気にして発言できない場所となっているのではないか。そこから学べることは「正しいことは言っても良いことはない。ただひたすらヘラヘラして我慢して通り過ぎればいいのだ」という教訓かもしれない。そんなことを学んでもらうのが学校ではないはずだ。さらに言えば、英語の発音が上手にできる帰国子女でさえ、いじめられるのが嫌で、わざと下手な発音で読んでいるというのが実態ではないのか。そんな正義が通らないクラスの人間関係のあり方に、多くの教師はなすすべがないというのが現実ではないのか。クラスの人間関係でしか社会性を身に着けられないというのは幻想ではないのだろうか。ディスカッションやグループワークはオンラインでもできる。むしろそのほうが余計なことに目がいかず、本来の平等な人間関係やリーダーシップや譲り合いが身に着きやすい可能性さえある。「いじめや不平等を経験して、それを乗り越えていくことで身に着く社会性もあるのではないか」「そもそもそれが社会というものだ」という議論もあるだろう。それはたしかに一理あるかもしれない。しかし、「それが社会というものだよ」と教えることが、どんな教育効果を生むというのだろうか。大人たちが、将来ある子供たちを収容所のような狭い教室に押し込め、自殺や不登校やうつになるまで、心身ともにぼろぼろに疲れさせてしまう権利はないのではなかろうか。

8.子供が家にいても共働き家庭は面倒を見られないし、第一、給食がないと困る

この点は実は、母親たちが自宅学習に激しく抵抗を示す最大の動機だったりする。どうしても年少の子供を家に残して全員が外出しなければならない家庭に対しては、行政から補助を出して家庭向け教育支援員を派遣すべきだろう。親が昼食を用意していけないとすれば、民間の弁当配送を利用してもよい。あるいは、学校にカフェテリアをつくり、お昼の時間だけ登校して友人たちとランチを食べるシステムでもよい。だが、それにしても、もともとは親も子供も在宅しているというのがかつての家庭のあり方だった。父親(近年は母親も)は朝から晩まで会社に張り付き、子供は囚人のように学校や塾に一日中行かされるというのは、ここ数十年の生活様式だ。成人のテレワークの導入促進と併せ、この生活様式を新しくしていくことをもっと追求すべきなのではないだろうか。

9.学級活動や委員会活動、生徒会・児童会活動はどうするのか?

ディスカッションやミーティングに限っていえば、これらすべての活動はオンラインでもできるし、それで少しも困ることはない。問題は動物の飼育をしたり、植物の栽培をしたり、学校の清掃活動をしたり、学校の図書を整備したり、校内放送をしたり、新聞づくりをしたりといった活動をどうするかだ。それらの活動が本当に必要なのであれば、担当の子供が学校に来て動物や植物の世話をしたり図書を整備したりすればよい。放送や新聞づくりなどはオンラインでもまったく可能だ。

10.学校で友達と遊ぶのが好きな子供たちから学校生活を取り上げることはできない

たしかにその通りだ。全員を無理やりオンライン教育に引きずり込む必要はない。学校教育とオンライン教育、あるいはそれらを折半するスタイルを選択できるようにすればよい。いずれにしても、学び方、教育のあり方に柔軟性を持たせることが非常に重要と思われる。(高橋眞人)

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