日大のクライシスマネジメントの失敗 – 悪質タックル事件

2018年5月6日。日本大学と関西学院大学とのアメリカンフットボールの試合で、悪質なタックルが問題になりました。

 

対応は後手後手に回り、まずは悪質タックルをした学生が記者会見で謝罪し、そのあとから監督やコーチが記者会見にのぞみ、両者は釈明に追われました。問題が提起されてからは、とくにテレビのワイドショーで追求が始まっていました。

 

関学大が日大の悪質タックルに気づいたのは試合の翌日でした。しかもSNSを通じて外部からの指摘を受けてだったのです。動画を撮られていたのです。試合を観戦した個人によってユーチューブにアップされ、それをツイッターで視聴するようにと誘導発言されていたのです。

 

関学大は、改めてビデオで試合を確認して、悪質タックルがあったことに気がつきます。動画は、朝日新聞のツイッターアカウントや、スポーツジャーナリストのM氏などが取り上げ、問題提起が始まりました。不祥事はSNSからマスコミによる報道へと類焼し、炎上は拡大していきました。

危機管理の始動の出遅れが痛かった

日大アメフト部として、いや日本大学という学校組織として、炎上する前の動画がアップされた段階で、クライシスマネジメント(危機管理)をスタートさせておかなくてはならなかったのです。

 

学生が謝罪してから、監督やコーチが釈明。これは順序が逆の対応です。

事態を甘くみたことも被害を拡大

「たかがSNSだ。火は消えるだろう」「スポーツ部の問題だ。大学組織は関係ない」「学生個人に謝らせれば済む」。こうした考えが、日本大学というブランドに傷を負わせてしまいました。

 

組織の中の個人が、組織全体が、どう行動し、どう発言しなければならないのか。それを改めて考えさせてくれる事件でした。(浦山明俊)

 

おすすめ記事一覧

長引くコロナ禍など先行き不透明感により、広告・PRの世界でも、世界的に労働需要の大幅な縮小が起きてい…

 忘年会やクリスマスパーティーのシーズンが近づいています。人々はパーティーであなたがどんなスピーチを…

コンテンツマーケティングは主要な潮流 記事や動画といったコンテンツを制作・発信することで潜在顧客の中…

今やSNSはフェイクニュースの嵐 コミュニケーション技術が日進月歩で進化する状況にあって、SNSは今…

危機管理とメディア対応は密接不可分 企業に法律が関係する危機が発生したとき、普通は弁護士の意見を聞く…

日米の謝罪をめぐる文化ギャップ 企業による謝罪の件数はここ数十年の間に激増している。これは日本だけに…

 患者にとって重要なのは、実は設備が整った有名病院を探すことではなく、良い医師、自分に合った医師に巡…

昨今は、企業の広報活動のためにツイッターなどのSNSを活用すべきだと盛んにいわれるようになりました。…

インターネットなどのメディアを通じて情報(コンテンツ)を提供し、自社の周囲にファンをつくっていく考え…

現代の消費者にとって、企業に正直さ、誠実さを感じるかどうかが、商品を購入するかどうかの重要な判断基準…

1990年代から2000年代の我々は、新時代のコミュニケーションツールであった電子メールのやり取りに…

テレワークが普及するにつれて、企業が在宅勤務の従業員を管理するため、各従業員のPC画面を直接モニター…