プレスリリースがミイラにならないために

広告費なしでメディアを通じた宣伝ができると企業に長年の間、愛されてきたプレスリリースだが、いまや年々、その存在意義が小さくなっているといわれている。

記者の半数はプレスリリースを活用していない

米国の調査で、広報・PR関係者にとっては衝撃的な結果が出た。多くのジャーナリストがプレスリリースを無視しているという結果だ。米マックラック社などが世界中の500人以上のジャーナリストを対象に調査したところ、米国で53%、米国外で41%が新しい記事のネタを見つけるためにプレスリリースを活用していなかった。プレスリリースに大きく頼っているジャーナリストは3%だけしかいなかった。米国を拠点とする記者の29%、米国を拠点としない記者の36%が「やや」プレスリリースに頼っており、16%のジャーナリストがプレスリリースを活用していたが、通常のものとは別の形式を好んでいたという。

SNSを含むネットでネタ探しする記者が増えている

この現象はなぜ起きているのだろうか。読者の皆さんも想像に難くないと思うが、SNSを含めたネット上の情報だけで、記者にとってはネタ探しの効率が格段に良くなっているのだ。

プレスリリースは進化しなければならない

しかし、メディアは依然として大きな影響力をもって存在している。企業にとってプレスリリースの存在意義はなくなったわけではない。それでは、いったいどのように古めかしい伝統的なプレスリリースから脱却し、SNSやキュレーションサイトに対抗することができるだろうか?

インフォグラフィックで注目を集められる

上記の調査によると、ジャーナリストの半数近く(49%)は、インフォグラフィック(情報やデータを視覚的に表現したもの)が含まれているプレスリリースは注目される可能性が高いと答えている。結局、記者も生きた人間なのだ。視覚に訴えることで、より注意を喚起できるということだ。日本ではまだ少ないが、今後、世界の趨勢に倣って増えてくるものと思われる。

動画付きプレスリリースも世界の潮流

世界のジャーナリストの13%は、リリースに動画が付いていれば注目すると回答している。インフォグラフィックにしても動画にしても、企業にとっては手間がかかる。そのせいだが、米国企業の広報部門の35%は、リリースにより注目を集めるために、工夫なしに通常の形式のリリースだけを発行している回答している。また、「リリースをネット上に掲載すれば、関心のある人は自由に見に来られるのだから、それでいいではないか」との言い訳も企業の広報部門から聞こえてきそうだ。しかし、ジャーナリストにさえ見向きもされないプレスリリースが、一般ネットユーザーの目に止まるわけがなく、そのままでいいという理由にはならない。

SNSの利用は記者の利便性を向上させる

さらに、ジャーナリストにとってSNSは、最新のニュースを入手するための強力な手段となっている。記者の3分の1以上(34%)が最初の段階のニュースソースとしてSNSを利用しており、37%のジャーナリストは今年、ツイッターやインスタグラムのモニターにもより多くの時間を割きたいと考えている。 記者の27%は、ツイッターが自分たちのメインのニュースソースであると答えている。広報部門はSNSを活用する必要があるということだ。それはあなたの会社が重視するメディアの人々を助け、提供するサービスを高めることにもつながる。

しかし、SNSも完璧ではない。SNSを情報のソースとして利用しないジャーナリストたちの70%は、フェイスブックやツイッターがニュースソースをランク付けする方法が自分たちの仕事に役立たないと考えている。(高橋眞人)

おすすめ記事一覧

世界中の感染症専門機関の中で、米国の疾病予防管理センター(CDC)がもっとも信頼できるといわれている…

「ロックダウン」とはどういう意味? 英語の「ロックダウン」とは「封鎖、封じ込め」という意味です。ロッ…

2017年10月に行われた衆院選は、小池百合子劇場でした。都知事の職にありながら、国政の政党である希…

クッキーに「予期しない固形成分」でリコール 米国の菓子メーカー・ナビスコのチューイー・チップスアホイ…

「#Me Too運動」が高まりを見せているいま、企業としての準備は? 2018年4月、財務事務次官が…

ハンカチを取り出し涙を何度も拭った社長 企業による下手な謝罪は時に状況を悪化させる。旭化学工業は住宅…

国内SNS利用者は7500万人を突破 諸々の問題を含みつつも、フェイスブック、ツイッター、LINE、…

4人のうちの3人が上がり症 成人の75%が人前で話すときの上がり症だという調査結果があります。メディ…

近年、米国の消費者は企業に対し、社会的責任(CSR)を重視することに加え、社会的・政治的な問題につい…

インターネットなどのメディアを通じて情報(コンテンツ)を提供し、自社の周囲にファンをつくっていく考え…

新しくパワフルなコンテンツの制作・配信は、これからのビジネスの成功に不可欠です。こうした考え方を「コ…

3億人以上のホテル宿泊客情報が流出 ウェスティンやメリディアンなどのホテルチェーンを所有する世界最大…