消費者は企業に価値観の表明を求めるようになっている
近年、米国の消費者は企業に対し、社会的責任(CSR)を重視することに加え、社会的・政治的な問題について正しい姿勢を保持することを望んでいるとの調査結果が出ている。米国のデジタルマーケティング会社、クラッチ社による最近の調査によれば、消費者がますます企業のバリュー(価値感)を重視しているという。
米国の消費者の7割が企業に社会問題へのスタンス表明を求めている
調査によると、米国の消費者の71%が企業は現在の社会問題に対して正しいスタンスを取ることが重要と回答し、75%は自らが同意できるスタンスの企業の製品を買いたいと答えている。また、59%の消費者は、自分が重要と思う問題をサポートしていない企業から買い物することを多分やめるだろうと回答した。
米国の消費者の3分の2は「社会的意見を持つ企業に乗り換えたい」
米国のPR会社、コーン・アンド・ポーター・ノベリ社が2018年に実施した調査結果でも、米国の消費者の78%は、企業は収益を上げるだけではなく社会に良い影響を与える必要があると回答し、77%は社会的目的を共有することにより、その企業に共感することができると回答している。さらに消費者の3分の2は、強烈な社会的意見を持つ企業の製品に乗り換えるだろうと回答している。
社会問題に取り組むことで収益にもプラスの影響
このような自らの価値観を表明する企業のあり方は、バリュー(コアバリュー)経営の一種であるといえる。かつては不要な物議を醸すなどのリスクがあると見られてきたが、今ではむしろ自らの意見を発信することが期待されている。たとえば、ナイキやベン&ジェリー、パタゴニア、Airbnbといった多くの企業が、社会問題に取り組むことを通じて、収益にプラスの影響をもたらしているという。
自社の意見表明により顧客のロイヤリティを獲得
これらが意味していることは、企業は自らの意見を表明することによって、顧客のロイヤリティを獲得することができるということにほかならない。企業が消費者の意見と価値観を共有し、だれもが問題だと考えていることの解決に貢献しようとするとき、消費者はその企業と協力したり購入したりすることを望んでいるということだ。
価値観の表明は製品・サービスの価値さえ上回る
米国のPR会社経営者であるジョン・ワイス氏は「ホットな社会問題や政治的問題に対して自らの姿勢を表明することは、PRのプロにとって危険なように思えるかもしれないが、今や、沈黙を保つことが逆に企業の収益に悪影響を与える可能性もある」と指摘している。企業が消費者と同じ価値観を共有している場合、消費者はその企業をより共感的に見る可能性が高まるということだ。また、多くの場合、企業の社会的責任の取り組みと組織のバリューの置き方は、製品・サービスの価値を上回るとさえいわれている。
日本では芸能人の社会問題への意見表明がタブー視されなくなった
日本の大企業の社会的問題に対する取り組みは、いまだ米国ほどには熟していないようだが、たとえば、日本でもタレントがこれまではタブーだった社会的・政治的問題に対する意見をSNSやネット番組などで表明する事例が増えている。タレントのローラが辺野古基地移転の環境問題で発言したり、お笑い芸人の村本大輔(ウーマンラッシュアワー)やほんこんが政治的な意見を表明したりといったケースがそれに当たり、少なくとも芸能界ではこうした発言がもはやタブーではなくなってきたといえるのではないか。(高橋眞人)